2017年02月20日

こま切れ「イエスタデイ」

武満版「イエスタデイ」の運指をようやく最後までさらったので、思い切って録画してみたのですが・・・

  • 余裕ゼロ
  • 滑らかさゼロ
  • ダイナミクスの変化ゼロ
  • 表情ゼロ

という、ゼロが並ぶ結果となってしまいました(^^;

引き続き練習せねばなりません(汗

恥を忍んで公開処刑といたします(グサッ

その1:イントロ
頭のところは4本の指で5音を出さねばならず、音を優先するのか音価を優先するのかなど、いろいろな運指が考えられるのですが、1指でE5Fを押さえたのちに2指でD7Fを押さえるという新たなやり方を考案したのでトライしてみました。

その2:ここからメロディ
途中の3連の厄介なフレーズがなかなか消化できません。

その3:その続き
土曜に撮ったのがあまりにもひどすぎたので日曜夜に再録画。ただし昨日に比べてチューニングが気持ち高かったようです。運指をさらったばかりということもあって反復練習が足りていません。

その4:1カッコ
その3の終わりからここの頭までが曲でもっとも盛り上がるところなのですが、ひたすら平坦です(^^;

その5:2カッコ
どのパーツも何テイクも撮っているので、いい加減くたびれてきて、集中力低下。曲としてはその4>その2>その3>その5と進みます。

その6:エンディング
まだ確認しながら弾いてます。

で、全部を合体したらこうなりました(繰り返し後のその2とその3は同じものを再利用)。その3のチューニングが少し高めなので音感のいい人は気持ち悪いかも。いずれ全体を通しで弾けるように頑張りマス。

ちなみに動画の合体処理をWindowsムービーメーカーでやってみたらクリップによって映像と音とがずれる現象が起きてしまったので、iPhoneのiMovieというアプリを使いました。つなぎ目のところで自動的にフェードイン/アウトをやってくれるようです。その後音声だけ抜き出してAudacityでリバーブを掛けてあります。

posted by Estruch at 02:23 | Comment(0) | 宅録と動画(上達の記録) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月18日

USBマイク

iPhoneの内蔵マイクはイマイチ。だからといって、ツイッターに上げる程度の気合いを入れない宅録(録画)に、単体マイクやオーディオインタフェースをセットして・・・は面倒。

そこでこのところ使っているのが、コンデンサー型のUSBマイク。

いろいろ出ていますが、Audio TechnicaのAT2020USBiというのを選びました。

Lightningケーブルが付属していて、iPhoneにも接続可能。

先日のこれも、このマイク+iPhoneで録画(録画)しました。
t_IMG_0826.jpg

マイク本体にボリューム(ゲイン)も付いていますが、クラシックギター程度の音量だと最大にしてもまだ不足気味。カメラアプリ側でオートゲインが働いてしまうせいかもしれません(アプリ次第?)。あと、三脚が軽すぎてマイク側が前のめりになりがちなので設置に注意が必要。

そこらへんを承知して使えば、まぁまぁの音で録れます。

ちなみにSHUREのMV51というUSBマイクもやや気になるところ。DSPが内蔵されていて、楽器に適したプリセットもあるとか。

こうしたUSBマイクはオーディオインタフェースを必要とせずにスマホやパソコンに直接接続できるので、音質を求めるには物足りないにせよ、手軽に録るには十分です。

とはいえあまり機材ばかりに金を突っ込んでしまうと貧乏まっしぐらに。これ以上はガマンガマン(笑)。



posted by Estruch at 16:26 | Comment(0) | 宅録と動画(機材やソフト) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月14日

低音の魅力

「低音の魅力」という言葉からフランク永井さんを連想してしまう世代なのですが(笑)、中学のときの音楽の先生によると「声域の上限は訓練次第で上げられるが、下限は生まれつきで決まる」のだそうで、天性のものなんでしょう。

話をギターに戻すと、低音がズンと響くギターは、弾いていて気持ちがいいもんですね。

ピラミッドのような安定感というのでしょうか。

禰寝さんのサントスモデルで「Valsa sem Nome」の頭部分を。

このギター、低域が上質で量感があるので、たとえば37秒あたりからのフレーズで5弦と6弦がズンズンきて、弾いていて気持ちが大変よろしいんです(腕が伴わないところはご容赦ください)。

ちなみにリバーブはかけていない無加工のモノクロ録音ですが、低音が安定しているせいか、音に広がりを感じられるような気がするのは手前味噌?


以前はあっさり・さっぱりとした印象のあるグラナダ系のギターを気に入っていた時期もありますが、最近は低音が美しくかつ量感があるギターに魅力を感じるようになりました。

また来年あたり、言うことが変わったりするかもしれませんけど(^^;
posted by Estruch at 22:07 | Comment(2) | ギター本体の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

あ、これ、弾ける

ちょっとやっては放置し、ちょっとやっては放置し、を幾度となく繰り返していた武満先生編曲の「イエスタデイ」をまた懲りずに取り出しています。

そろそろ右側もやろうよ、という内なる声に応えて、これまでは見開きの左側でギブアップしていた読譜を今回は最後まで。

難しそうに思えた1カッコも、よく見ればD#m7(b5)というボサノバでおなじみのコードであることが分かって、比較的すんなりと運指を確認。

そして何回かさらっているうちに不思議な体験が。

「あ、これ、弾けるわ」、という漠然とした直感が降りてきたのですね。

今の段階では運指が分かったというだけで曲としてはどうしようもないレベルですし、お披露目できるようなクオリティになるまでには相当の時間がかかりそうですが、繰り返し練習していればいずれ弾けるようになるから大丈夫、みたいな確信がフッと沸いてくるという初めての感覚。

コツコツ練習しているうちに出来るようになった「Luiza」の成功体験のおかげかもしれません。

posted by Estruch at 02:42 | Comment(0) | 日々の練習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月02日

不如意な手指

自分の指って自分の指なのになかなか思うように動いてくれませんね。

たとえば[0x413x]という形から、
t_IMG_0760.jpg

中指を着地させると同時に小指を浮かしたいのですが...
t_IMG_0761.jpg

なぜかいつも小指は上がらずに薬指が上がってしまうという(苦笑)。

陸上十種競技の選手として活躍し、現在はタレントとなっている武井壮氏は、弱冠小学5年生のときに「自分の身体は自分の意思どおりには動かせていない」ことに気付き、それ以来、「自分の身体を自分が思ったとおりに動かす」ためのトレーニングを積み重ねてきたといいます。

ちなみに、身体をコントロールできない状態のまま反復練習しても意味はない、というのが彼の理論だそうです。

うっ、基礎練習をサボっている身には耳が痛い話・・・(^^;

だって、各指の独立性を高める練習って、正直ツマラナイし、指の負荷が高いので痛めてしまいそうで(と言い訳)。

もどかしいけど頑張ります。

posted by Estruch at 01:10 | Comment(2) | 日々の練習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

弾き込み

ギターは弾き込むほど音が変わる/良くなる、という説あるいは伝説があり、アコギを含めてどこのギター関連ブログもこの話題を一度は取り上げるぐらいメジャーな問題ですが、ホントのところはどうなんでしょうね。

インターネットをがーっと検索してみると、こんな感じの情報が出てきました。

変わる派の人たちの言い分
  • 木の乾燥が進むため
  • 塗装の乾燥が進むため
  • 接着剤の乾燥が進むため
  • 木材繊維中のセルロースが結晶化するため
  • 振動によって木の繊維細胞の向きが変わる(揃う)ため
  • 弦の張力によってブリッジ周囲の表板の形状(緊張)が変化するため
  • 楽器店や製作家にそう言われたから本当なのだろう
  • 実際に変化を経験した
  • 放置しておくとまた鳴らなくなる
  • そう思い込んだほうが夢があって楽しい
  • 杉より松のほうが時間がかかる
  • ハウザーは10年かかるぞ(ドヤッ)

変わらない派の人たちの言い分
  • それって単なる錯覚や思い込みでしょ
  • いいギターに使われている木は十分に乾燥とエージングが進んでいるはずなので、製作後に性質が大きく変化するとは考えられない
  • 客観的な比較評価が不可能
  • 弾き込みではなくて経年変化(経年劣化)では
  • 弾いているうちにその楽器の鳴らし方に慣れただけ
  • ギターが変化したのではなく腕が上達したため

どちらの主張にも一理あるように思えてしまいます。

これまでギターをいくつか弾いた経験では、新しめのギターと製作から50年以上経過した古いギターの音の傾向に違いがあるのは確実と感じるのですが、それが弾き込みによる変化なのか、経年による変化(くたびれた状態)なのか、過去と現在の製法等による違いなのか、よく分かんないんですよね。

金属(主に真鍮)で作られているサックスにも、「この楽器はまだ抜けていない」「この楽器は(よく吹き込まれていて)抜けている」という評価軸があるのですが、木とは違って水分やセルロース化は関係ないので、ギターの弾き込みが分からないのと同じように、金属の抜ける抜けないというのが実のところよく分かりません。

まぁ結論は出ないのですが、とりあえず、「ギターは弾き込むほど音が変わる/良くなる、と思い込んだほうが夢があって楽しい」、ということにしておきます(^^;

いくつか面白そうなページのリンクを貼っておきますのでお暇なときにでも。

posted by Estruch at 19:58 | Comment(2) | ギター本体の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

滞在を延長(無期限!?)

年末から滞在している50年代のマルセリーノ・ロペス。
t_IMG_0372.jpg
(製作年とシリアル番号は画像処理。60年代からはラベルの「M」と「L」が赤文字になります。)

本来は短期滞在の予定でしたし、フラメンコ仕様ということで第一印象は好みの音ではなかったのですが・・・

弾いているうちにだんだんとその魅力に引き込まれ・・・・

この機を逃してしまうのはあまりにもったいないぞと悪魔のささやきが聴こえるようになり・・・

あとはアレがソレで(^^;

氏のことはOrfeoマガジンのvol.3でも紹介されています。
t_名称未設定-1.jpg

t_名称未設定-2.jpg
工房の壁にはこれまで製作したギターのサウンドホールのくり抜きが釣り下げられているそうで、シリアル番号からすると、この写真の左端か、写真に写っていないさらに左にあるんじゃないかと。

いやしかし、ホント、すごい。
posted by Estruch at 23:43 | Comment(0) | ギター本体の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

きれいな音でていねいに

ショップを訪れると、先客が試奏しているところに遭遇することがたまにあります。

一度だけプロの試奏を見聞きする機会がありましたが、ひとつひとつの音の粒が違っていましたし、フレーズの滑らかさもまったくのベツモノでした。さすがです。

意外と上手なのが20代ぐらいの若者です。基礎を含めて小さい頃から練習を重ねてきているのでしょう。今日見かけた若者も上手で、3万円ほどの量産下位モデルのギターからいい音を紡ぎだしていました。

一方で、高齢の男性客は・・・。

どのお客さんもキャリアは長そうで、なにやら難しそうな曲を弾くのですが、とにかく音がきたない。どんな音かといえば、たとえば鍵爪で弦を引っ掛けたような音。

そして曲をガシャガシャと弾く。まさにガシャガシャ。なので何を弾いているのか分からない。

試奏の目的はギターの音の確認なのですから、そんなに急いでフレーズを弾く必要はないのに。

それとも、「どうだ、上手だろう!」とでも主張したいのかな。

年齢とともに独り善がりになり、美しい音を出そうと常に意識する、一音一音を大切に弾く、自分の音を録音して聴き返し反省する、そういった意識がなくなっちゃっているのかなぁ、なんて若輩者は考えるわけです。

いずれそういったお手本となるような大先輩の試奏現場に遭遇したいと切に願っております。

失礼しました〜

posted by Estruch at 23:36 | Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月20日

ローズウッドも

ハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)がワシントン条約によって取り引きが厳しく規制されていることは知っていましたが、なんと、今年の1月2日から、ブラジリアン・ローズウッド以外のすべてのローズウッドも新たにワシントン条約の対象になったんですね。先日知りました。


いい機会なので、後学のために調べてみました。

まず、現時点での植物界の附属書(PDF)を覗いてみると、ギターに関係しそうな木材として、

「附属書T」記載
  • Dalbergia nigra(ブラジリアンローズウッド)

「附属書U」記載(☆は今回追加された種)
  • Dalbergia spp.(附属書Tを除くローズウッド)☆
  • Guibourtia demeusei(ブビンガ)☆
  • Guibourtia pellegriniana(ブビンガ)☆
  • Guibourtia tessmannii(ブビンガ)☆
  • Pterocarpus erinaceus(アフリカローズウッド)☆
  • Swietenia humilis(メキシカンマホガニー)
  • Swietenia macrophylla(ブラジリアンマホガニーやホンジュラスマホガニー、ただし新熱帯地域の個体群に限る)
  • Swietenia mahogani(マホガニー)
  • Diospyros spp.(エボニー、ただしマダガスカルの個体群に限る)

あたりが見つかります。

附属書Tのほうが厳しく、学術目的や、条約適用前(ワシントン条約が発効された1975年以前?)に取得(伐採)したものしか取り引きできません。相手国・地域の輸出許可書(CITES)とInvoiceを添えて経産省に輸入申請し、経産省の承認ののち、ようやく輸入が可能になります。

ローズウッドが追加された附属書Uは、もう少し緩くて、相手国・地域の輸出許可書を税関に提出し、通関時確認で輸入が可能です。附属書Tよりは簡便とはいえ、いずれにしても手続きが必要になりました。

t_キャプチャ.jpg

ギターの場合、新品か中古かは問わず対象になり、また、たとえばラベルに記載されている製作年が条約締結前だからといって手続きが不要になるというわけではないようです。

経産省に訊いたら、輸入に必要な相手国・地域の輸出許可書、通称「CITES(サイテス)」の発行は、相手国・地域の専管なので経産省はあずかり知らぬが、一般にはラベル記載の製作年やシリアル番号を元にメーカーや輸出業者が当局に申請して取得するのではないか、との見解でした。

なので、輸出入に慣れている海外ショップならすぐに話は通ると思いますが、個人売買の場合は、相手にCITESやInoviceを手配してもらうのは嫌がられる可能性が高そうです。

そういった規制を知らないで(あるいは知っていながら)附属書記載の木材が使われているギターあるいは原材料を輸入した場合、外為法違反となり、送り主に返送されるか税関で没収され処分されるんだとか。

ただし、税関ではあくまで抜き取りでしかチェックしていないので、大半がスルーのまま配達される、という情報もあります。保証はありませんけど。

法律に則って輸入する場合の手続きについてはこちらの情報が参考になります。


ちなみにDi Giorgioにはハカランダの合板が使われているので「附属書T」に該当することになり、1月2日の改正とは関係なく、正式に海外から輸入するのはなかなか面倒です。

しかし取り引き規制がこうやって厳しくなっていくと、ギターの輸入業者やショップだけではなく、原材料を必要とする国内外のルシアーさんはこれから大変かもしれません。

もしかしたら近い将来、すべてのローズウッドが附属書Uから附属書Tに移って、いい材料を使ってギターが作れなくなる時代が来てしまうのかも。そうならないことを祈ります。

posted by Estruch at 23:34 | Comment(2) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

ジョアンの奏法

大それたタイトルですが、ジョアン・ジルベルトのコピー譜をここ半年ほど何曲か練習してきたなかで、頭の整理も兼ねて、感じたことを書きます。

ジョアンの研究家でもなければコード理論などに詳しいわけでもないので、あくまで初級者の「個人の感想」ということで、間違いや勘違いがあれば「優しく」(笑)指摘してください。

(1) 1小節=1コード

曲や部分によって異なるのはもちろんで必ずしもすべてに当てはまるわけではありませんが、同じコードの複数の小節に対して、役割は同じながらもヴォイシングが異なるコードを小節ごとに割り当てる弾き方が多く見られます。

たとえば、

・GM7×2小節を、GM7[3x443x]+G6[3x243]で弾く
・F#m7×2を、F#m9[2xx254]+F#m7[2x222x]で弾く
・BM7×2を、BM9[x2132x]+BM7[x2434x]で弾く
・Cm7×2を、Cm7[x5x565]+Cm9[x5355x]で弾く
・DM7×2を、D6[x5420x]+DM7[x5422x]で弾く(定番)

といったスタイルです。

[2017/1/19 追記] ときには、2小節にわたるひとつのコードを、ツー・ファイブに分割して弾くこともあります。

同じコードを続けて弾いても曲としては成り立つのに、それだと平板的になってしまいがちなので、曲に色彩とストーリーをつけるために、小節ごとにコード付けをしているように感じます。

コードチェンジが多くなるので初心者・初級者にはハードルが高く感じられます。

(2) ドロップ・ヴォイシング

ジョアンのコピー譜には普段あまり見慣れない押さえ方のコードが出てきて、しかも譜面によっては複雑なテンションを含むコード名が割り振られているため、余計に難しく思えてしまうのですが、ヴォイシングに簡単なからくりがあるようです。

どういうからくりかというと、ジャズでいうところのドロップ2やドロップ3やドロップ4的なヴォイシングを「おかず」(アクセント)として多用していて、曲に色彩を与えているように思います。

たとえば[xx3333]や[xx3335]は、一見するとFをルートとするコードに思えますが、実はBb6とBbM7の5th(F)をルートに持ってきたコードと捉えることができます。[2017/1/18追記]もしくは、Gm7の7th(F)をルートに持ってきたコードとも捉えられます。

あるいは、「ボンファに捧ぐ」のライブバージョンでは、ジョアンは最初のフレーズを[5xx587]>[xx4545]>[3x443x]>[3x243x]と弾いていて、このうち[xx4545]は一見するとF#dimに見えるものの、実はD7(b9)の3rd(F#)をルートに持ってきたコードと解釈することができて、そうするとコード進行はAm7(9)>D7(b9)/F#>GM7>G6となり、ツー・ファイブ・ワンであることが分かります。

Desafinado」の冒頭に出てくる[2x022x]は、DM7の3rdをルートに持ってきたコードとして知られています。

コピー譜によっては見かけのダイアグラムでコード名を割り当てているので、コードの流れを読むときには要注意です。

(3) 5弦ルートを6弦ルートで弾く

たとえばB7(b9)[x2121x]をB7(b9)/F#[2x121x]で弾いたり、BM9[x2132x]をBM9/F#[2x132x]で弾く方法で、かなり頻繁に使っているように感じます。

善郎さんによると、5弦ルートを6弦ルートで弾いたほうがサウンドに広がりが出るということなので、ジョアンは流れの中でのヴォイシングを考えて決めているのではないでしょうか。

これも(2)と同じで、見かけの形からコード名を割り振ってしまうと、この例ではB7(b9)/F#はF#dimに、BM9/F#はF#6になってしまい、コードの流れが見えてこなくなる可能性があるので、同じく要注意です。

ただし、ボサノバでよくやる5弦と6弦を交互に弾く弾き方は、ジョアンはまったくやらないようです(個人的には5弦と6弦の交互弾きは聴いていてスマートに感じられないので自分もやりません)。

(4) 稀に代理コード

ジャズの人が演奏するような複雑な代理コードはあまり使っていないように思うのですが、たまに「おや?」というコードが割り当てられていることがあり、もしかしたら代理コードではないかなと推測しています。

たとえば「The Best of Two Worlds」に収録されている「Ligia」に、D#m9[x6466x]>G#7(b13)[4x455x]>D9[x5455x]>D9[x5455x]>C#M9[x4354x]>C#M9[x4354x]というところがあるのですが、この部分の#系の調性からするとDはスケールトーンには含まれないはずで、ちょっと不思議な響きがします。

ところが構成音をよくみるとD9はG#7(b13)とルート以外は同じなので、おそらく「まっすぐな道だけでは面白くないので、ちょっと脇道に入った感じ」を出すために、G#7(b13)の代理コードとしてD9[x5455x]を割り当てているのではないかと考えています。

ちなみに一般的なLigiaの譜面を見ると、ここの部分はD#m9>D#m9>G#7(13)>G#7(b13)>C#M9>F#7(b13)となっていて、D7は出てきません。やはりジョアン独自のコード付けと考えられます。

(5) 3声コード

ボサノバの基本は4声コード(P+ima)ですが、ジョアンはたまに3声(p+im?)で弾いているようです。ジョアンほどのレベルであれば弾き損ないは考えられないので、意図的と思います。

たとえば同じく「Ligia」で、11小節から16小節までの6小節でC#7(4,9)>C#7(9)を3回繰り返すのですが、本来の[x4444x]>[x4344x]ではなく、[x444xx]>[x434xx]で弾いているように聴こえるのですが、どうでしょうか?

(6) バチーダのパターン

曲想に合わせてパターンを決めているようですが、いわゆるパルチード・アウトと呼ばれるカッティングのパターン(こちらの図の3番目)をもっとも多く使っている印象があります。

そうしたカッティングの間やコーラスの区切りで、テンポは変えずに曲の流れを変化させるために、ボサノバの基本ともいえる「ジャン・ジャン・ジャジャーン」を効果的に挿入して緊張感を緩めたような雰囲気を作り出しています。

(7) イントロ・間奏・エンディング

イントロは基本的にナシで、弾いたとしてもコードのアルペジオのみ。間奏はなくて、コーラスを背中合わせで繋ぎ合せてひたすら弾いて歌う。エンディングも基本的にナシで、すとんと終わり。

これが許されるのはジョアンだけかもしれません。

(8) ソリッドな親指

親指の打拍がまったくといっていいほど揺らがないのがジョアンのすごさ。ウルフトーンが低く、かつ、低音が伸びないDi Giorigio/Tarregaの特性と相まって、スルド(大太鼓)のような響きが生まれ、安定した音楽を支えています。

(9) 鋭いコードチェンジ

逡巡も留保もなく、美しく研がれた日本刀のように、スパッ、スパッとコードチェンジが行われ、中途半端な押弦による音のつぶれやビレは一切ありません。

(10) アドリブ的な弾き方はあまりしない

1曲の中でジョアンは何コーラスも繰り返しますが、1コーラス目も2コーラス目も3コーラス目も基本的に同じ弾き方で、(1)や(2)のヴォイシングの違うコードをバリエーションとして使うことはあっても、ジャズの人たちがやるような毎回のように違う演奏をすることはほとんどないように思います。

(11) ダイナミクスは変えない

曲中の盛り上がるところでクレッシェンドをしたり、穏やかなところでディミヌエンドをしたりなど、ほかのミュージシャンがやりがちな音量の変化はジョアンの演奏にはありません。

コード(ヴォイシング)によって曲に色彩の変化はつけるものの、強度は手段としては使わずに、ほぼ一定に保ちながら淡々と弾き続ける印象があります。

そのせいもあるのか、盛り上がるところでは一般にテンポが走りがちですが、ジョアンは走ることなく一定のテンポを刻んでいきます。

◆◆

ジョアンは妹だか従姉妹だかの家の風呂場に篭って「Chega de Saudade」を完成させた、というエピソードが知られています。また独特の奏法を確立したあともジョアンはある曲に8時間もかけてコード付けをした、というエピソードをどこかのブログか何かで読んだことがあります。

ジョアン研究家ではないのでここからは推測ですが、上に書いたようなさまざまなテクニックを使って、色彩やストーリーやスピード感や緊張感が変化する「設計図」を綿密に作り、それを忠実に繰り返しながら演奏する。そんなスタイルがジョアンをジョアンたらしめているのではないかと勝手に想像します(実際はもっともっと高い次元で設計図を作っていると思いますが、そこまで理解も想像も及ばないので)。

絶版となっている高橋信博氏の「ジョアン・ジルベルト・スタイル ボサノヴァ・ギター奏法」には、

「彼のサウンドを特徴付けるもののひとつに、コード進行上でリード・ヴォイスの流れとして表され、ヴォーカルの背景で第二のメロディとなる完璧なカウンター・ラインがあります。その起伏は大体において滑らかなものですが、ただそれだけではなく、ベース・ラインも含めたヴォイシング全体をコーラス単位で見ると、構成音のごく僅かな変更も許されないほど完成されていて、そこに彼のひらめきと周到な計算の程を窺い知ることができます」

と書かれているのですが、その意味の一端がようやく分かってきました。なお、この「リード・ヴォイス」とは、コードのいちばん高い音(トップノート)で作られるラインのことと思います。

逆に考えれば、複雑そうにみえるジョアンのコピー譜も仕掛けが分かれば単純化できるはずで、実力を超えて無理に完コピで弾くことを目指さずに、ジョアンっぽさは減ってしまいますが自分が弾けるレベルにまで簡略化するやり方もアリかもしれません。

ふー、とりあえず今の実力レベルではここまで。また勉強します。

posted by Estruch at 15:05 | Comment(6) | 曲やミュージシャンやアルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする